伊豆市所蔵美術品デジタルミュージアム
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鶏合 [とりあわせ]

員数:
6曲1隻
制作年:
明治43年
材質:
屏・紙・着色
サイズ:
97.8cm × 228.4cm
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 鶏合は鶏を闘わせる遊戯で“蹴合(けあい)”とも言い、古くは『日本書紀』雄略紀(8世紀)に記される。朝廷や武家では3月3日の行事として牛飼童が水干(すいかん)を着して執り行ない、のちには民間でも行われた。年中行事のひとつとして大和絵の好画題である。
 この作品は、明治43年の第12回紅児会展に出品された。この頃の青邨作品には、古絵巻研究の成果を画中に生かしたものが多いが、本図では「伴大納言絵詞」(12世紀)の影響が認められ、この絵巻の制作期とほぼ同時代の風俗で描かれている。中流の公家の家族とその従者らであろうか、道すがら荷を降ろし、鶏合を囲んで見ている。婦人が壺装束(つぼしょうぞく)に紅の掛帯(かけおび)を結んでいることから、神仏参詣の道中と思われる。こうした“円環構図”は、「伴大納言絵詞」中巻の“子供の喧嘩を見物する人々”の場面でみられ、“鶏合を仕切る後向きの人物”は、同絵巻下巻に登場する“役人に糾問される舎人(とねり)”の姿を引用したものであろう。さらに、唐櫃や表差袋(うわざしぶくろ)を入れた市女笠(いちめがさ)などの小道具も同絵巻に登場するものであり、子供の喧嘩と類似する闘鶏をテーマに、青邨がいかに絵巻を巧みに取り入れているかをみる上でも興味深い作品である。本図では、絵巻から学んだ躍動的表現が活かされ、たっぷりとした伸びやかな描線による骨格の太い人物描写には、後の名作「洞窟の頼朝」につながる青邨の個性を見出すことができる。
 なお本屏風の4扇目には、絵を切取り、あらたな紙に貼って仕立てたとみられる補修の跡があり、貼られた図様の上には、青邨自身によるとみられる新たな輪郭線の描き起こしがなされている。その作品は、明治43年10月号『日本美術』に掲載されており、その写真と校合すると、4扇目の一部に相違がみとめられることから、紅児会展出品後に損傷し、補修されたものと考えられる。

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