伊豆市所蔵美術品デジタルミュージアム
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鴨川夜情 [かもがわよじょう]

員数:
1幅
制作年:
昭和9年頃
材質:
軸・紙・着色
サイズ:
86.0cm × 119.4cm
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 江戸時代後期の文人画家田能村竹田(たのむらちくでん)(1777-1835)と、彼と交流の深かった頼山陽(1780-1832)、青木木米(もくべい)(1767-1833)の3人が京都鴨川で清談を交わす情景を描いたものである。豊後国竹田荘の人竹田は、文政6年(1823)、京都に滞在し、京洛の文化人との交流を楽しんだ。本図のような出来事が実際にあったとする記録はみえないが、同年の竹田筆「柳塘吟月図」の賛に、七夕の夜、皆と酒を飲んで帰る途中の竹田が、木米の家を辞してきたばかりの頼山陽に会い、2人で木米の噂をしながら鴨川の床で語り合ったことが記されている。本図もこの話をもとにしながら、そこに木米を加え3人の清遊の景としたものと思われる。真ん中で仰向けになって空を見上げるのが山陽。眼鏡をかけ、足先を流れに浸しているのが竹田。ただし竹田の眼鏡は、彼が若い頃から眼を患っていたことに基づく靫彦の創意によって加えられたものであろう。また耳の不自由だった木米は、団扇を使いながら横を向いているが、その飄々とした風貌には、竹田筆「青木木米像」と相通じる雰囲気が感じられる。靫彦は、修善寺・沼津時代から竹田に深い関心をよせ、その作品を本で観たり、関連の書物を多く読んだりしている。本図の構想や人物の個性の描き分けも、そうした若き日の蓄積から生まれたものといえよう。川の部分には多様な墨の表情を見ることができる。水面に施された淡墨の地隈、川の流れを示す細線、半円形の丸い石にみられる片隈・たらし込みの技法。夏の夜の涼しげな趣は、こうした変化に富んだ墨の表情によって醸し出されている。尚、昭和7年の第3回七絃会展には、本図と良く似た同題の作品(茨城県近代美術館蔵)が出品されており、本図はその試作品として描かれたもの。後に加筆して、昭和9年に沐芳に贈られた。

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